労災保険とは?仕組み・対象・給付内容をわかりやすく解説!



そういえばこの前、仕事中に手をケガしちゃってさ~。
そのまま仕事終わりに病院行って、普通に健康保険で済ませちゃったんだけど、、、
労災申請すべきだったのかな~?

うーん、労災で対応すべきだったね。
健康保険だと3割自己負担だけど、労災なら自己負担ゼロなんだから。

うそっ!?知らなかった、、、労災も健康保険と同じだと思ってたよ~。

労災保険って給与からの天引きもないから、意外とみんな存在を知らなかったりするんだよね💦
でも実は、保障内容は健康保険より手厚いことも多いんだよ。
今回はその『労災保険』について、しっかり解説していくよ!
私自身も、きりちゃんと同じで、FPの勉強を始めるまでは労災保険のことなんてほとんど知りませんでした…。
「仕事中にケガをしたら労災があるらしい」くらいの認識はありましたが、
正直、会社に報告するのはちょっと面倒だし、
保障の違いもよくわからなかったので、これまで普通に病院へ行って、労災は使ってきませんでした。
でも実際には、労災で申請した方が、健康保険よりも手厚い保障が受けられるケースが多いです。
せっかく制度があるのに、知らなかったり、面倒だからと使わないのはもったいないので、
ぜひ今回の内容でしっかりと知識を身につけて、
いざというときにはためらわずに、労災保険を正しく活用していきましょう!
目次
給与から引かれてないのに入ってる!?労災保険の仕組みを解説
正式名称は「労働者災害補償保険(ろうどうしゃさいがいほしょうほけん)」といいます。
名前が長くて覚えにくいため、日常的には**略して「労災」**と呼ばれるのが一般的です。
労災は、正社員だけでなく、パート・アルバイト・派遣社員など、雇われて働いている人なら基本的に全員が対象になります。
加入の手続きはすべて会社側が行い、保険料も全額会社負担なので、働く側は「知らないうちに加入していた」というケースも多いんです。
一方で、フリーランスや業務委託契約の人たちは原則として対象外となります。
つまり、「会社に雇われて働いているかどうか」が大きなポイント。
該当する人は、知らずにスルーしてしまうのは本当にもったいない制度なんです。

えっ、雇われてる人全員対象で、しかも保険料は会社が全部払ってくれてるって…
すごすぎじゃない!?なんでそんなに待遇いいの~?

それはね、労災保険って“働かせる側=会社がちゃんと責任を持って!”っていう仕組みだからだよ。
労働者は、命とか身体とか、めっちゃ大事なものをかけて働いてるでしょ?
だからもしケガや病気になったら、そのリスクは“雇った側がしっかり補償しましょう”って考え方なんだ。
給料から引かれてないのに保障が手厚い!?労災保険料の仕組みとは

労災保険のすごいところは、保険料が全額「会社負担」だという点です。
健康保険や雇用保険のように、私たちの給与から保険料が天引きされるものとは違って、
労災保険は給料明細にも登場しない“見えない保険”なんです。
保険料の金額は、業種ごとにリスクの大きさに応じて料率が決められていて、
たとえば建設業のように事故が起きやすい仕事では保険料が高めに設定されます。
一方で、デスクワークが中心の業種などは比較的低めです。
このように、「労働者を守るためのコスト」は、リスクのある仕事をさせる会社側が負担すべきという考え方がベースになっているんですね。
業種 | 労災保険料率(令和6年度) |
---|---|
林業 | 5.2% |
建設業(道路新設事業) | 1.1% |
金融業(銀行・保険など) | 0.25% |

業種によって料率が全然違う…!

林業や建設業はケガのリスクが高くて、治療にかかるお金も多くなりがち。
一方、金融業はデスクワーク中心だからケガのリスクも少なくて、医療費もあまりかからないんだ。
だから、リスクが高い業種は保険料も高く、リスクが低い業種は少なくて済むってわけだよ。
労災保険の対象は2つある?業務災害と通勤災害の違い
労災保険の保障範囲は、「業務災害」と「通勤災害」の2つに分かれます。
業務災害は、仕事中や業務に関連して起きたケガや病気のこと。たとえば作業中にケガをしたり、現場で転倒した場合などが該当します。
一方の通勤災害は、通勤途中の交通事故や転倒など、通勤中に起きた災害が対象です。
このように、労災保険は仕事中だけでなく、通勤中もカバーしてくれる心強い制度なんです。

えっ、通勤中のケガも対象なの!?知らなかった…

ちなみに通勤災害って“まっすぐ通勤してること”が前提なんだけど、
“日常生活の範囲内の寄り道”だったら通勤災害の対象になるんだよ。
寄り道の内容 | 労災対象 |
---|---|
夕食の食材を買う | ◯ 対象になる |
ドラッグストアで日用品を買う | ◯ 対象になる |
理髪店で散髪 | ◯ 対象になる |
カラオケに立ち寄る | ✕ 対象外 |

会社帰りに友達とカラオケ寄ったりと“私的な寄り道”をしちゃうと、
その間にケガしても労災の対象外になっちゃうから注意してね。
仕事中にケガをしたら…?労災で受けられる主な給付
労災保険の大きな魅力は、医療費の自己負担がゼロなことと、
働けない間の休業補償が手厚いことの2つです。
① 医療費の自己負担👇
ケガや病気で通院・入院した場合、医療費は全額労災保険が負担します。
健康保険のように「3割自己負担」が発生することはなく、
自己負担は基本ゼロ円で治療を受けることができます。
保険制度 | 医療費の自己負担 | 保険料の負担 |
---|---|---|
健康保険 | 3割負担 | あり(会社と本人が折半) |
労災保険 | 0円(全額補償) | なし(全額会社負担) |
② 休業補償給付👇
さらに、仕事ができない状態が4日以上続くと、
休業補償給付として、休んだ期間中の賃金の約80%が支給される仕組みになっています。
これは健康保険の傷病手当金(約67%)よりも高く、
生活へのダメージをできるだけ抑えることが考えられています。
保険制度 | 待期期間の要件 | 支給額 |
---|---|---|
健康保険(傷病手当金) | 連続する3日間の休業が必要 | 標準報酬日額の約67% |
労災保険(休業補償給付) | 通算で3日間の休業 | 給付基礎日額の80%(60%+特別支給金20%) |

通算で3日間の休業…
えっ、じゃあ間に出勤しても休業補償ってもらえるの?

おつ、いいところに気づいたね。
労災の待期3日間は“連続してなくてもOK”だから、間に出勤日があっても通算で3日休んでいれば大丈夫なんだよ

しかも、支給額は傷病手当金より多いんだよね。
仕事中や通勤中のケガは、“働かせた会社側にも責任がある”って考えられてるから、
その分、保障が手厚くなってるってわけ。
③ 傷病補償年金・特別支給・一時金👇
療養を始めてから1年6か月が経過しても治っていない場合で、
かつその症状が重く、障害等級1級~3級に該当するような状態であれば、
休業補償給付ではなく、「傷病補償年金」という給付に切り替わります。
これは、「治っていないけれど重度の状態が続いている」場合に、
今後の生活を安定させるために年金形式で継続的に支給されるものです。
等級グループ | 支給内容 | 代表的な障害例 |
---|---|---|
1級〜3級 | 障害補償年金(重度) | 両目の失明、両腕の喪失、寝たきりなど |
4級〜7級 | 障害補償年金 | 片目の失明+もう片方の視力低下、片手首からの切断、言語障害など |
8級〜14級 | 障害補償一時金(比較的軽度) | 指の一部欠損、聴力の一部喪失、関節の可動域制限など |

労災の障害年金は公的の障害年金と比較して保障って手厚いの…?

うん、“仕事中のケガ=会社の責任”だから、
その分、補償も手厚くなる仕組みなんだよ

あと労災の障害等級は1級から14級まであって、
軽い障害でも細かく補償されるのが特徴なんだ。
一方、公的な障害年金は原則2級まで、厚生年金に加入していた場合でも3級まで。
だから、労災の方が補償の“段階の幅”が広くて、より多くのケースに対応できる仕組みになってるよ。
③ 遺族補償年金👇
仕事中や通勤中の事故などで労働者が亡くなってしまった場合、遺された家族を経済的に支えるために支給されるのが「遺族補償年金」や「遺族補償一時金」です。
種類 | 支給対象 | 支給形態 | 支給額 |
---|---|---|---|
遺族補償年金 | 生計を維持されていた遺族 | 年金方式(継続的に支給) | 給付基礎日額の153~245日分/年 |
遺族補償一時金 | 年金の対象遺族がいない場合 | 一時金方式(一括で支給) | 給付基礎日額の1,000日分 |

うげっ、支給額なにこれ!どうやって計算するの…?

労災の遺族年金って他の年金や手当と比べても圧倒的に難しいんだよね💦
1つずつ順番に説明していくよ!
業務災害で亡くなってしまったケースをもとに、
遺族補償年金がどう決まるのかを【ステップごとに】わかりやすく説明していきます。
▽設定(前提)
- 仕事中の事故で死亡 → 労災保険の遺族補償年金の対象に!
- 被災者:月給50万円
- 年齢:30代前半
- 扶養家族:配偶者(妻)+子ども2人(18歳未満)
✅STEP 1:給付基礎日額の算出
▽給付基礎日額の算出(事故前3か月)
- 月給:50万円
- 対象期間:たとえば4月・5月・6月

7月に事故で亡くなった場合、上記の対象期間になるよ。
▽暦日数(労災では“出勤日”ではなく“暦日”で割る)
- 4月:30日
- 5月:31日
- 6月:30日 ➡️ 合計:91日
▽計算式:
給付基礎日額 = 総賃金 ÷ 暦日数
= 50万円 × 3ヶ月 ÷ 91日
= 1,500,000円 ÷ 91日 ≒ 16,483円
⚠ ここで重要!!
でも!給付基礎日額には年齢ごとの「上限」がある!
今回のケースは「30代前半(30歳以上35歳未満)」と仮定
➡️ 令和6年度の上限は 17,532円/日
➡️ 16,483円は上限内なのでそのまま適用OK!

なんで年齢で上限が違うの〜? 若くてもいっぱい稼いでる人だっているのに、不公平じゃない…?

国としては“年齢ごとの平均賃金水準に合わせて上限を設定してる”って考えなんだ。
上限を設けないと、財源が足りなくなって制度が立ち行かなくなる恐れがあるから、ある程度の“線引き”をしてるんだよ。

でも実際には、“ちゃんと働いて、その分賃金を払っていた会社” や “遺族になった家族” からすれば、
『保険料は実賃金で払ってたのに、肝心の保障は年齢でカットされるのか!』って思うよね。
特に若くして亡くなった場合なんかは、報われなさがすごく大きいんだ…。
詳しく年齢別で上限額や下限額を確認したい方は↓↓から確認してね。
厚生労働省:年齢階層別の最低限度額・最高限度額表(令和6年)
✅STEP2:支給日数の決定
労災の遺族補償年金は、遺族の人数に応じて「支給日数」が決まります。
この「日数分」を給付基礎日額にかけることで、年金の“年間支給額”が算出される仕組みです。

まず初めに、遺族の人数を確認するよ。
順位 | 対象となる遺族 |
---|---|
① | 配偶者(妻)・子 |
② | 父母 |
③ | 孫 |
④ | 祖父母 |
⑤ | 配偶者(夫) |
⑥ | 兄弟姉妹 |

なあに、この順位?(労災の遺族年金むずすぎ✨)

これはね、労災の遺族年金が誰にもらえるかの順番だよ。
上の人がいたら、下の人はもらえないの!だから一番上の人が優先ってわけ。

今回のケースだと、配偶者と子ども2人がいるから、もらえるのはその3人。
その下の順位にあたる父母は対象にならないってことだね。
遺族の人数が「3人」と確定しました。
それでは続いて「支給日数」の表を見ていきましょう。
遺族の人数 | 年金の支給日数 |
---|---|
1人 | 153日分 ※55歳以上または一定の障害状態にある妻は175日分 |
2人 | 201日分 |
3人 | 223日分 |
4人 | 245日分 |

遺族の人数は「3人」だから支給日数は“223日”だね!

正解!じゃあ実際に式に当てはめていくよ。
遺族が3人いる場合、支給される日数は 223日分 になります。
給付基礎日額が 16,483円 ですので、
年金額はおよそ 3,674,609円(=16,483円 × 223日) になります。
月あたりにすると、約 30.6万円。
生活保障としては、かなりしっかりした水準ですね。

月30.6万円かー、確かに大きな金額だけど、子ども達2人を育てるには少し心もとないかも…

でも実はね、そういう遺族の生活をサポートするために、『遺族特別支給金(一時金)』や『遺族特別年金』っていう上乗せの給付も用意されてるんだよ。

すごっ!労災ってほんと手厚いね~。
健保より強い!?仕事中のケガには労災が守ってくれる

労災ってほんと難しいね~、
で、でも健保より手厚いってことは分かったよ…!

それが分かれば今日は大成功だね。
業務中のケガや病気って、会社の責任が重いぶん、保障も手厚くなるんだ。

そうそう、だからきりちゃん今後は仕事中にケガしたら堂々と言うんだよ。
『会社何してくれとんねん!医療費全額だせや!』ってね。

さすがにそこまでは言わないけど💦
でも分かった、今度からは労務課にお願いしに行く~!
労災保険は、健康保険や雇用保険に比べると、まだまだ認知度が低い制度です。
そのため、通勤中や仕事中にケガをしても、制度をよく知らないまま病院を受診し、
健康保険を使って3割負担で医療費を支払っている人が多くいます。
本来なら労災保険を利用すれば、自己負担なしで治療が受けられるケースも多く、
制度を知らなかっただけで損をしてしまっているのが実情です。
だからこそ、多くの人が社会保障の仕組みを学び、
労災についても正しい知識を持っておくことが大切です。
使える制度をしっかり理解し、正しく活用することで、
無駄な医療費の支出を減らし、生活の安心にもつなげていきましょう!

