学生納付特例の追納期間はなぜ10年?


ねえねえ、ちょっと不思議に思ったんだけど、、、
20歳から国民年金って“納付が義務”なんだよね?
でもさ、私が大学生だった頃って、もう20歳は超えてたのに、実際には納めてなかった気がするんだよね、、、
これって、どういうことなの?

国民年金は20歳から納付が原則だよ。
ただ、学生は収入が少ないことが多いから、『学生納付特例』という“納付を待ってもらえる制度”がある。
だから納めていなかったのは未納じゃなくて、制度を使っただけ、ということだね。
目次
そもそも学生納付特例制度とは
学生納付特例制度とは、20歳以上の学生を対象に、国民年金保険料の納付を一時的に待ってもらえる制度です。
国民年金は、原則として20歳から保険料を納付する義務があります。しかし、学生は収入が少ない、あるいは収入がまったくない場合も多く、生活費や学費の負担だけでも精一杯というケースが少なくありません。
そこで国は、学生の経済的な負担に配慮し、「在学中は無理に保険料を納めさせず、まずは学業に専念してもらおう」という考え方から、この特例制度を設けています。
学生納付特例制度を申請し、承認を受けると、在学中は国民年金保険料を納めなくても未納扱いにはなりません。また、その期間は将来年金を受け取るための受給資格期間としてカウントされます。
ただし、この制度は保険料の免除ではなく、あくまで「猶予」です。そのため、後から保険料を追納することができる仕組みになっています。
つまり学生納付特例制度は、「国民年金を払わなくてよい制度」ではなく、「今は払わなくてもよいように配慮された制度」だといえます。
免除ではなく、あくまで「猶予」の制度
学生納付特例制度は、国民年金保険料を「免除」する制度ではありません。
あくまで、**納付を一時的に待ってもらう「猶予」**の制度です。
免除制度の場合は、その期間の保険料が法律上免除され、原則として後から支払う必要はありません。
一方、学生納付特例制度では、保険料そのものは消えておらず、「今は納めなくてよいが、後から納めることができる」という扱いになります。
このような仕組みになっている理由は、学生の経済状況に配慮しつつも、将来の年金制度との公平性を保つためです。
学生時代は収入が少なく保険料を納めるのが難しい一方で、社会人になれば収入が安定し、納付できる可能性が高くなります。
そのため国は、
「学生のうちは無理に払わせない」
「ただし、余裕ができたら後から納められるようにする」
という考え方を取り、免除ではなく猶予という形を選んでいます。
この「猶予」という位置づけがあるからこそ、学生納付特例制度には**追納(後払い)**の仕組みが設けられているのです。

そっかー。じゃあ、私が大学生だったころの期間は、
“学業を頑張ってたから免除!”ってわけじゃなかったんだね。
あっ、ということはさ、追納しなかったら、もしかして将来もらえる年金って……

うん。追納しなければ、その分は将来の年金額が減ることになるね。
学生納付特例は必ず追納しなければならない制度ではない
学生納付特例制度は「猶予」という言葉が使われているため、
「あとで必ず保険料を納めなければならない制度」と思われがちです。
しかし実際には、追納は義務ではありません。
学生納付特例の承認を受けた期間について、追納をするかどうかは本人の判断に委ねられています。
追納しなかった場合でも、その期間が未納になることはなく、年金を受け取るための受給資格期間には算入されます。
一方で、追納をしなかった期間については、将来受け取る老齢基礎年金の年金額には反映されません。
つまり、追納しないという選択をした場合、年金を受け取る資格は得られるものの、年金額はその分だけ少なくなる仕組みです。
このように学生納付特例制度は、
「必ず後から払わせる制度」ではなく、
「将来の年金額を増やすかどうかを自分で選べる制度」
として設計されています。
学生時代の経済状況や、社会人になってからの収入・生活状況は人それぞれであることを前提に、追納を強制せず、選択の余地を残している点が、この制度の特徴です。

学生のときに納めてなくても、年金をもらうための資格はちゃんともらえるんだね。
でも、その分だけ将来もらえる年金は減っちゃうのかぁ。
む〜、ここが“免除”と“猶予”のいちばん大きな違いなんだね。

そうだね。
免除の場合は、保険料を納めていなくても将来の年金額に一定割合が反映されるけれど、
学生納付特例は猶予だから、追納しなかった分は年金額に反映されない。
つまり、資格は確保されるけれど、金額は減る。
そこが免除と猶予の決定的な違いだね。
学生が社会人として落ち着くまでの10年という追納期間
学生納付特例制度における追納期間が「10年」とされているのは、
学生が社会人になり、収入や生活がある程度安定するまでの期間を想定しているためです。
学生時代は、学費や生活費の負担が重く、収入も限られているケースが多くあります。
一方で、卒業後すぐに経済的な余裕が生まれるとは限らず、就職してからも数年間は生活基盤を整えることで精一杯という人も少なくありません。
そこで制度上は、
「学生のうちは無理に納めさせない」
「社会人になって、落ち着いてから判断できる時間を確保する」
という考え方を前提に、追納できる期間を10年としています。
ただし、いつまでも追納できるようにしてしまうと、制度の管理が難しくなり、世代間の公平性も保ちにくくなります。
そのため、学生への配慮と制度の公平性とのバランスを取った結果として、「10年」という期限が設けられているのです。
この10年という期間は、
追納を必須とするための期限ではなく、
将来の年金額を増やすかどうかを、自分の生活状況に応じて判断するための猶予期間
だといえます。

たしかに、新社会人のころってバタバタするし、生活費だけでいっぱいいっぱいになりそうだもんね。
そう考えると、10年くらい待ってくれるのは助かるな〜。

社会人になってすぐは、仕事や生活を整えるだけで精一杯になりやすい。
だからこそ、落ち着いてから判断できるように、10年という追納期間が用意されているんだ。
加算は「3年度目以降」から発生。学生当時の金額ではない
学生納付特例制度を利用した期間の保険料は、あとから追納することができます。
ただし、いつ追納するかによって、支払う金額は変わります。
学生納付特例の承認を受けた期間については、
承認を受けた年度の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合、
その期間に応じた加算額が上乗せされます。

『承認を受けた年度の翌年度から数えて3年度目以降』
って言われても、正直ピンとこないよね。
例えば、
2025年度が学生で、学生納付特例の承認を受けた期間だったとするよ。
この場合、カウントはこうなる。
- 2026年度:1年度目
- 2027年度:2年度目
- 2028年度:3年度目
だから、
👉 2028年度以降に追納すると、学生当時の金額ではなく加算がつく
ってことなんだ。
逆に言うと、
👉 2027年度までに追納すれば、加算はかからない
という仕組みだよ。
そのため、追納する時期が遅くなると、
学生時代に本来納めるはずだった当時の保険料額のままでは支払えません。
時間が経過する分だけ、支払う金額は高くなります。
この加算が設けられている理由は、
学生時代のお金の価値と、追納時点のお金の価値が異なるためです。
何年も後に同じ金額で支払えてしまうと、制度としての公平性が保てなくなってしまいます。
そのため制度上は、
「一定期間は加算なしで追納できる」
「それを過ぎると、経過期間に応じた加算を行う」
という仕組みが取られています。
つまり、追納は可能ではあるものの、
学生当時の金額でいつまでも払える制度ではない
という点が、この加算ルールの重要なポイントです。

そういうことだったのか〜。
私、てっきり加算されるのって、納付が遅れた“ペナルティー”なんだと思ってたよ〜。

たしかに、そこは誤解しやすいところだね。
でも実際は罰というより、お金の価値が変わることへの調整なんだ。
基本的に経済はインフレ傾向で、物価は少しずつ上がっていく。
だから、学生当時の金額をそのまま何年も後に納める、というわけにはいかないんだよ。

